「ターナー展」が東京都美術館で2013年10月8日(火)から開催予定です。
「ターナー展」はロンドン テート・ギャラリー所蔵の油彩30点以上に加え、水彩画、スケッチなど計約110点を展示し、彼が英国美術史上最も偉大な画家といわれるまでの軌跡を辿ろうというものです。
テート・ギャラリーは趣向の異なる4つの美術館から構成されています。テート・ブリテン、テート・モダン、テート・リバプール、テート・セント・アイヴスのうち、今回は1500年代のテューダー朝美術から現代までの英国美術を中心に展示するテート・ブリテンからの貸与です。
テート・ブリテンは2万点以上に及ぶターナーの作品だけでなく、ジョン・エヴァレット・ミレーによる《オフィーリア》に代表されるラファエル前派の作品も所蔵していることでも有名です。(ラファエル前派展)
hana chan 注目の作品

《バターミア湖、クロマックウォーターの一部、カンバーランド、にわか雨》
Buttermere Lake, with Part of Cromackwater, Cumberland, a Shower, Joseph Mallord William Turner, 1798, Oil on canvas, Tate
《バターミア湖、クロマックウォーターの一部、カンバーランド、にわか雨》です。ターナーはロイヤル・アカデミーを卒業後、風景画を描くために国内制作旅行を試みます。この作品は1797年にイングランド北西部の湖水地方を訪れた時の作品です。
イングランド湖水地方は山と渓谷の峡に数多くの湖が点在する美しい景色で知られ、国内有数のリゾート地となっています。
この作品は、まだ自分の頭上には雨雲が立ちこめたままで遠方の雲間から差し込む陽光が雨滴に反射・屈折して虹を形成した瞬間を見事に描いています。ここに描かれている虹は綺麗に7色とはなっておらず、これはターナー自身による印象なのか、本当の白い虹を描いたものなのかとても気になるところです。日本では、尾瀬ヶ原で厳しい気候条件が揃えば白い虹を見ることができるので、ターナーは本当に白い虹を見たのかもしれませんね。
それにしても自然の雄大さを感じさせる作品です。以前、上高地へ行ったときに見た感動的な風景がふと脳裏をよぎりました。ターナーはこの頃、天候と大気が風景に与える変化を探求していたそうです。
《ヴェネツィア、月の出 (「大運河とジュデッカ」スケッチブックより)》です。ターナーは1819年夏に初めてイタリア旅行へ出掛けます。そこで無数のスケッチを行ううち、次第にイタリアの美しさに魅了されていきます。
この作品はその中の一枚で、水彩画で描かれています。水彩画特有のにじみが画面全体に柔らかい印象を与えています。また、ヴェネツィアの運河に立ちこめる霧などの空気感をカンバスに捉えることに成功しています。
《湖に沈む夕陽》です。一目見ただけだと、湖面と空の境界線がどこにあるかすら分かりません。湖面には何か浮かんでいるのでしょうか。構造物の輪郭が消失していて判別はできません。
このような厚い大気に構造物が飲み込まれている作品をモネのウォータールー橋で見たことがあります。ターナーもモネも、光と大気の効果を追求し続けて、行き着いたところがこのような世界ということでしょうか…
ターナーの作品を見に行く前に、印象派の風景画を何枚か見ていって、それと比較できたらとても面白いと思います。10月まで待ち遠しいですね。
hana chan 注目のポイント
風景画の画風の変化に注目!
会場 | 東京都美術館 |
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会期 | 2013年10月8日(火) ─ 12月18日(水) |
開館時間 | 9:30~17:30(入室は閉室30分前まで) |
金曜日と10月31日、11月2日、3日は20:00まで | |
休館日 | 月曜日(ただし10月14日、11月4日、12月16日は開室。10月15日、11月5日は閉室) |
お問い合わせ | 03-5777-8600(ハローダイヤル) |
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