新たな表現への挑戦 1920~

Still Life with a Cat, FUJITA Tsuguharu, 1939-40, Oil on canvas, Bridgestone Museum of Art, Ishibashi Foundation
藤田嗣治は1913年渡欧しますが、第一次世界大戦の戦渦に巻き込まれます。しかしそれにもめげず、フランスに留まります。この時期に、モディリアーニやピカソを知ります。藤田は乳白色の絵肌に、面相筆による墨色で輪郭線を引き、対象を細密に描く技法を確立しました。この技法によって描かれた絵が西洋画壇で一躍人気となりました。
《猫のいる静物》は1939年、8年ぶりに訪れたパリでの作品です。棚の上に野菜や魚介類が雑多に置かれていて、少々ごみごみした感じを受けました。しかし、それぞれの静物に近づいて見てみると、細部まで正確に描かれていることに驚きました。また、全体的に淡い色で描かれており、やわらかさが感じられます。画面右隅に描かれている、棚の上のごちそうを今にも手中にせんと企む猫の存在が、とても滑稽で、かつただの静物画ではないことを強く印象付けます。
私がこの展示で最も衝撃を受けた作品が、佐伯祐三の作品です。佐伯は1924年(大正13年)に渡欧します。佐伯はパリ郊外のオーヴェール=シュル=オワーズに、フォーヴィスムの画家モーリス・ド・ヴラマンクを訪ね、彼の絵に強い影響を受けます。また、エコール・ド・パリの画家であるモーリス・ユトリロの絵にも感動したそうです。
《レストラン(オテル・デュ・マルシェ)》はパリのカフェテラスを描いたものです。佐伯はヴラマンクに自分の作品を「このアカデミックめ!」と一蹴されショックを受けたらしいですが、そこからの画風の変化が激しすぎますね。ものすごく素早いタッチで描かれた街角の文字が非常に印象的で、ざわざわと踊っているかのようです。

Café Terrace with Posters, SAEKI Yuzo, 1927, Oil on canvas, Bridgestone Museum of Art, Ishibashi Foundation
これまで印象派ばかり見てきたためか、私が受けたショックが大きいです。《テラスの広告》も当時のパリの街角を今に伝えてくれる素晴らしい作品です。そしてかっこいい。《テラスの広告》では、文字だけでなく、黒い線で描かれた木枠やイス、テーブルまでもが踊っているかのようです。絵から「ざわつき」を感じたのは初めてです。
今回の展示は、とても新鮮な経験ができました。印象派だけには留まらない、日本人西洋画家の強いエネルギーを感じました。中でも佐伯祐三の作品には感動しました。他の作品も是非鑑賞してみたいと思います。
ブリヂストン美術館
会期:2013年3月23日(土)-2013年6月9日(日)
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