東京都美術館で開催中の「レオナルド・ダ・ヴィンチ展―天才の肖像」へ行ってきました。
今年はルネサンス・バロックイヤーということで、エル・グレコ、ラファエロ、ルーベンス、と来て今回は巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチです。この時代の画家が好きな方には最高の一年ですね。
「レオナルド・ダ・ヴィンチ展―天才の肖像」には、イタリア、ミラノのアンブロジアーナ図書館・絵画館が所蔵するレオナルド・ダ・ヴィンチの《音楽家の肖像》やダ・ヴィンチ・コードに登場した「鏡文字」が使われている《アトランティコ手稿》が公開されています。ダ・ヴィンチの傑作といわれている《音楽家の肖像》は日本初公開です。ダ・ヴィンチの絵画と言えば《モナリザ》が有名すぎて他が霞んでしまいそうですが、この《音楽家の肖像》はダ・ヴィンチの現存する数少ない油彩画の一つです。
今回の展示で私が一番印象に残った作品は、やはりダ・ヴィンチの手稿ですね。本物のダ・ヴィンチの手稿を初めて見て興奮してしまいました。今から500年以上も前に一人であれだけ広範囲な分野の学術的考察を記述していたなんて信じられません。手稿はダ・ヴィンチのライフワークとも言えるもので、約40年間にわたる集大成となっています。現在では全体の約2/3が失われたにも関わらず、約5,000ページも現存しているとのことです。今回展示されている《アトランティコ手稿》はその手稿のうちの一冊です。全部で1,119葉からなるこの手稿の内容は数学、幾何学、天文学、植物学、動物学、土木工学、軍事技術など幅広い分野にわたっています。

Studi sulla quadratura di superfici curvilinee (‘lunulae’) e appunto in lingua francese, Leonardo da Vinci, 1517-19 ca., Codice Atlantico, f.476 recto
《円積問題(「月形」に関する素描とフランス語によるメモ)》はダ・ヴィンチが円積問題を解こうと試行錯誤している課程が描かれています。現代でいえば、単なる数学のノートなのですが、ダ・ヴィンチが描くとなぜか歴史のあるデザイン書のような高尚な感じを受けますね。それにしてもこの幾何学模様が美しいです。図に添えられたコメントは有名な「鏡文字」で書かれており、判読するのが困難です。
円積問題について調べてみると、そもそも円積問題とは与えられた円と同じ面積をもつ正方形を定木とコンパスで作図できるか、というものです。古代ギリシアの三大作図不能問題のうちの一つといわれています。ちなみに定規とコンパスで円積問題を解くことが不可能であることは1882年に証明されています。
《影の理論の習作》は球体に光が当たった時にできる影を複数の円を用いて試みている図であると推測できます。よく光や色の教科書に出てくる、三原色の図のようなものが描かれています。球体に光が当たる図といえば、月の満ち欠けを解説した《レスター手稿》が詳しいですね。《レスター手稿》は Microsoft会長のビル・ゲイツ氏が所有しており、天文学に関する記述があります。今回は展示されていませんが、下に参考として紹介します。そこには、太陽、月、地球が球体で、かつ正しい位置関係で描かれています。書かれたのが1500年頃だというのは驚きです。
こちらは《永久機関のスケッチ》です。このタイプの永久機関は見たことなかったですね。一体どういう構造になっているのでしょうか。確か水が関係していたかと思います。円の下半分は水中で、浮力が関係している?
ダ・ヴィンチはこの他にも永久機関のイラストを残しています。ダ・ヴィンチのオーバーバランス・ホイールが有名ですね。リンク先に実際に作ってみた動画がありました。動きも美しいです。
このような機械のスケッチは本当に精巧で、スケッチというよりかは設計図といえると思います。実際、ダ・ヴィンチは機械をパーツ別に分解して誰でも組み立てられるように描いています。
これ以外にも、様々な手稿が展示されており、ダ・ヴィンチの好奇心の強さを感じることができます。他にも兵器である《歯形車輪に複数弩を装備した武器の習作》やアナモルフォーズの手法で描いた《アナモルフォーズ(幼児の頭部と二つの眼)の習作》も感動しました。今度は精密な解剖図を見てみたいと思いました。将来、世界中に散逸したダ・ヴィンチの手稿が一堂に会することがあれば幸せです。
東京都美術館
会期:2013年4月23日(火)~ 6月30日(日)
開館時間:午前9時30分から午後5時30分まで(入室は午後5時まで)
毎週金曜日は午前9時30分から午後8時まで(入室は午後7時30分まで)
休館日:毎週月曜日、(ただし、4月29日、5月6日は開室)、5月7日(火)
■管理人の評価
トラックバック