ゴッホが売られる!?米デトロイト市財政破綻の危機!

あの展覧会混んでる?

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財政破綻の危機に直面している米デトロイト市ですが、その借金返済のためにデトロイト美術館(Detroit Institute of Arts,通称DIA)の所蔵品が売却される可能性が浮上し市民の間で議論が巻き起こっています。

5/31の CNN が伝えるところによると、ミシガン州から資産売却などの権限を与えられた緊急財務管理者がデトロイト美術館に対しコレクション目録の提出を求めたことで、所蔵品が売却されるのではないかと危惧した市民や美術館スタッフから非難の声が上がったらしいです。

7/25日付の Bloombergの記事を引用します。もうすでにオークションハウスが動いているようですね…仕事早いです。

事情に詳しい関係者が匿名を条件に明らかにしたところによると、競売会社クリスティーズ・インターナショナル の複数の従業員が、美術品の鑑定作業の受託を見込み同美術館を訪れた。

同美術館の広報担当者、パメラ・マーシル氏は「クリスティーズから電話があり、職員2人を派遣すると言ってきた。誰がクリスティーズに連絡したか分からない」と述べた。

 

このデトロイト美術館ですが、古代エジプト美術から現代美術まで65,000以上の芸術品を所蔵する全米で6位に入るコレクションを誇る美術館です。ゴッホやモネ、ルノワール、セザンヌ、シャルダンのコレクションがあります。その中で、私が好きなゴッホの作品についてピックアップしてみることにしました。

Self Portrait, Vincent van Gogh, 1887, Oil on Canvas, The Detroit Institute of Arts

Self Portrait, Vincent van Gogh, 1887, Oil on Canvas, The Detroit Institute of Arts

ゴッホ1887年の作品《麦わら帽子の自画像》です。麦わら帽子の黄色と青色の服による補色のコントラストが美しいですね。ゴッホは生涯に40点近い自画像を描きました。その多くは2年余りのパリ滞在中に描いています(30点ほど)。その中でも、1887年の夏に描かれたこの作品はこれまでに描いてきた作品とは大きく異なっています。この頃から対象を忠実に再現するのではなく、筆触分割による効果を目的とした新たな手法への取り組みを始めたのです。

明るい色彩や安定した表情は、ゴッホの自画像の中でも最も有名な自画像といえるのではないでしょうか。

Portrait of the Postman Joseph Roulin, Vincent van Gogh, 1888, Oil on Canvas, The Detroit Institute of Arts

Portrait of the Postman Joseph Roulin, Vincent van Gogh, 1888, Oil on Canvas, The Detroit Institute of Arts

こちらは《ジョセフ・ルーランの肖像》です。ジョセフ・ルーランは郵便配達夫として働いており、アルルでゴッホの一番親しい友人として知られています。ゴッホは《ジョセフ・ルーランの肖像》を何枚か描いており、背景に花柄のカーテンを配してとても装飾的に描いた作品もあります。また、ジョセフ・ルーランの妻、オーギュスティーヌとも親しく、8点のモデルも務めています。《ルーラン夫人》が有名ですね。

 

The Diggers, Vincent van Gogh, 1889, Oil on Canvas, The Detroit Institute of Arts

The Diggers, Vincent van Gogh, 1889, Oil on Canvas, The Detroit Institute of Arts

こちらは《切り株を掘り起こす2人の男》です。1889年の春にサン=レミで描いた作品です。背景にアルピーユ山脈らしきシルエットが見えます。2人でスコップを持って掘るポーズは、ミレーの《土を掘り起こす男たち》を参考にしていると思われます。その完全な模写である、《2人の掘る農夫(ミレーによる)》や《雪に覆われた畑を掘る2人の農婦》など、農民の生活はゴッホが昔から愛着を持って描いてきたテーマです。

 

Bank of the Oise at Auvers, Vincent van Gogh, 1890, Oil on Canvas, The Detroit Institute of Arts

Bank of the Oise at Auvers, Vincent van Gogh, 1890, Oil on Canvas, The Detroit Institute of Arts

最後は《オーヴェールのオワーズ川岸》です。ゴッホ終焉の地として知られる、オーヴェール=シュル=オワーズでの作品です。オーヴェール=シュル=オワーズはパリから北西へ30キロ余り離れた農村で、ゴッホは亡くなるまでの2ヶ月間をここで過ごしました。2ヶ月間のうちになんと約80点の作品を描いており、1日1枚以上のペースで描き続けていたことになります。この作品は1890年7月に描かれました。ゴッホが亡くなったのが7月29日ですから、晩年の作品といえます。ゴッホが川岸を描いた作品といえば、《ローヌ川の星月夜》や、パリのセーヌ川を描いた《クリシー橋の釣り人》、《ボートのある川の風景》があります。

この作品はサン=レミ時代のタッチとはまた少し異なり、短い線と非常に素早いタッチで描かれています。川岸の木の色に様々な緑を使っていて、絵に深みがあります。参考までに、別の年代に描かれた川岸の絵を見てみましょう。パリで印象派に出会い、色彩の研究をしている頃のゴッホとはタッチも色彩も大違いですね。

 

《ボートのある川の風景》
Private Collection
River landscape with rowing boats on the shore, Vincent van Gogh, 1887, Oil on Canvas, Aberdeen, Sammlung William Middleton

River landscape with rowing boats on the shore, Vincent van Gogh, 1887, Oil on Canvas, Aberdeen, Sammlung William Middleton

《クリシー橋の釣り人》
シカゴ美術館
Fishermen and boats in the Pont de Clichy, Vincent van Gogh, 1887, Oil on Canvas, Art Institute of Chicago

Fishermen and boats in the Pont de Clichy, Vincent van Gogh, 1887, Oil on Canvas, Art Institute of Chicago

《ローヌ川の星月夜》
オルセー美術館
Starry night over the Rhône, Vincent van Gogh, 1888, Oil on Canvas, Musée d'Orsay

Starry night over the Rhône, Vincent van Gogh, 1888, Oil on Canvas, Musée d’Orsay

 

長々と大好きなゴッホについて語ってしまいました。デトロイト美術館は《麦わら帽子の自画像》や《ジョセフ・ルーランの肖像》という有名どころを所有しているため、もしこれらが競売にかけられたら《医師ガシェの肖像》並の評価をされるのではないでしょうか。一番心配なのは、これらの作品が個人の手に渡るなどして一般公開の場から消えてしまうことです。そうならないように今はとにかく祈るばかりです。

 

 

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