「フランシス・ベーコン展」 神経組織で感じるアート。絵の中の何かに、攻撃された。

あの展覧会混んでる?

 

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東京国立近代美術館で開催中の「フランシス・ベーコン展」へ行ってきました。

フランシス・ベーコンは20世紀のアイルランドを代表する画家です。ベーコンの絵はこれまで何度かネット上の掲示板で見たことがあります。どれも対象が何なのか分からないけど、唯一肉体か内臓の一部という点だけが分かるようなグロテスクな絵を描いている画家という印象しかありませんでした。今回の展示では、サブタイトルに「ピカソと並ぶ美の巨匠。」と掲げられるくらいなので、相当すごい画家なのでしょう。

 

展示会は下記のような構成となっています。

  1. 移りゆく身体 Transient Body 1940s-1950s
  2. 捧げられた身体 Sacrificed Body 1960s
  3. 物語らない身体 Anti-Narrative Body 1970s-1992
  4. エピローグ:ベーコンに基づく身体 Epilogue: Body after Bacon

 

ハイセンスなタイトルがとてもかっこいいです。ベーコンは “身体” しか描かなかったのでしょうか… とにかく早く見たくて仕方がなかったです。

 

hana chan 注目の作品

 

1. 移りゆく身体 Transient Body 1940s-1950s

 

Figure Study II, Francis Bacon, 1945-46, Oil on canvas, Huddersfield Art Gallery, Kirkless Collection

Figure Study II, Francis Bacon, 1945-46, Oil on canvas, Huddersfield Art Gallery, www.allpaintings.org

《人物像習作 II》 ひぃぃ… さっそく、不気味な絵が登場。口を開けて「あ゛あ゛あ゛あ゛~」と悲しみの咆哮を上げているかのようです。

そもそもこれは部屋の中?なんで傘を差している?全く意味が分からなかったです。ただ恐怖のみを感じました。

あと展示が始まってさっそくこの絵というのがとても不思議で、ベーコンは画家として活動を始めた時からこのような絵を描いていたのでしょうか。ピカソやゴッホのように、画家人生の中で画風がめまぐるしく変わった画家もいますが、ベーコンはどうだったのでしょう。残念ながらベーコンはこの絵以前に描かれた作品を自ら破棄したそうで、以前どうだったかを知ることはできません。

 

Study for a Portrait, Francis Bacon, 1949, Oil on canvas

Study for a Portrait, Francis Bacon, 1949, Oil on canvas, www.allpaintings.org

《肖像のための習作》 また叫んでる男が登場。顔の上部がかき消されていて、口だけが一番目立ちます。それにしても口の形が特徴的ですね。本当に叫んでいる人を見たことが無いのですが、どこか違和感のある口の形です。本当に叫んでいるのでしょうか?

この男は白い枠で囲まれた立方体の中に閉じ込められているように見えます。閉所恐怖症なのでしょうか?

また、枠の下の方から青い液体のような気体のような物が漏れ出ています。あぁ本当に謎ばかりです。

 

これまで、ラファエロルーベンス、エル・グレコなどの宗教画・寓意画ばかりを鑑賞してきたためか、絵画に書き込まれた様々な物体の意味を解釈しようと躍起になっていました。どうやらそのような見方はベーコンにおいては通用しないようです。この「フランシス・ベーコン展」を企画した東京国立近代美術館主任研究員の保坂健二朗氏によれば、ベーコンは “神経組織に直接働きかけるのが大事” と語っていたそうです。ここでの神経組織とは、脳の神経細胞のことらしいです。「ベーコンの絵には “意味” を考えるプロセスはいらない。絵を見た直後にどう感じたか。」それだけで十分ということでしょうか。

「フランシス・ベーコン展」のカタログ中での保坂氏の神経組織に関する文章や、芸術新潮第64巻第4号の保坂氏と脳科学者の茂木健一郎氏の脳に関する対談がとても面白かったです。

 

Figure Seated (The Cardinal), Francis Bacon, 1955, Oil on canvas

Figure Seated (The Cardinal), Francis Bacon, 1955, Oil on canvas, www.allpaintings.org

《座る人物像(枢機卿)》 枢機卿まで叫んでいます。画面が暗くて一層恐怖をあおります。今度は口より歯が主張しています。ベーコンは口を描く際、口腔内の病気に関する医学書を参考にしていたらしいです。なるほど、綺麗に整いすぎている気がしたのは気のせいではなかったみたいです。

なんというか、この精神に来る恐怖とか不安感は映画のリングやらせんを見ているときに感じたものと似ている気がしました。精神が呪いか何かのよく分からない力によってじわじわと侵されていく感じ。貞子的恐怖感。

 

 

Study for "Portrait of Van Gogh" V, Francis Bacon, 1957, Oil and sand on canvas, Hirshhorn Museum and Sculpture Garden,

Study for “Portrait of Van Gogh” V, Francis Bacon, 1957, Oil and sand on canvas, Hirshhorn Museum and Sculpture Garden, www.allpaintings.org

《ファン・ゴッホの肖像のための習作 V》 この展示会で最も驚いた作品です。これはゴッホです。1888年7月にアルルで描いた《タラスコンへの道を行く画家(仕事に行く画家)》を元にして描かれた作品です。これは同作品を元に描かれた6枚の連作のうちの5番目です。顔が元作品より怖くなっているのがベーコンらしいですね。

ベーコンの作品はこのゴッホの連作を描いた後から、色彩豊かになったそうです。これはまさにゴッホがパリで印象派画家たちと出会い、これまでのヌエネンやドレンテで描いていたような陰鬱な色彩から、今日知られるようなカラフルな点描へ変化していったことと重なる気がします。

ベーコンは、ゴッホのことを「偉大なヒーロー」と語り、尊敬していたみたいですね。

 

 

Selfportrait on the Road to Tarascon (The Painter on His Way to Work), Vincent van Gogh, July 1888, Oil on canvas

Selfportrait on the Road to Tarascon (The Painter on His Way to Work), Vincent van Gogh, July 1888, Oil on canvas

参考までに、ゴッホの《タラスコンへの道を行く画家(仕事に行く画家)》です。この作品は、絵を描くための場所へ向かうゴッホ自身を描いたものとされています。1888年の7月といえば、ちょうどゴーギャンからアルルへ行きたいという手紙がゴッホに届く頃ですから、この時はまだ一人孤独でした。ただ、ゴッホは画家のユートピアを作るという情熱に燃えていました。

ベーコンは、ゴッホの描く濃すぎるくらいの影も正確に模写しています。ただ、元作品では道の中央辺りを歩いているゴッホがベーコンでは道端に移動しているのが気になるところです。

 

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