フランス国立クリュニー中世美術館所蔵 「貴婦人と一角獣」展 6つの楽しみ方

あの展覧会混んでる?

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国立新美術館で開催中のフランス国立クリュニー中世美術館所蔵 「貴婦人と一角獣」展に行ってきました。

 

「貴婦人と一角獣」は、貴婦人とそれを囲む一角獣(ユニコーン)と獅子によって構成される6面のタピスリー(タペストリー)です。フランス国立クリュニー中世美術館の至宝とされ、これまで国外に貸し出されたのはメトロポリタン美術館のただ一回のみでした。クリュニー中世美術館ではこのタピスリーが円形の展示室で展示されており、まるでオランジュリー美術館のモネの「睡蓮」の部屋のようです。今回の新美術館の展示方法もこれをできる限り再現しており、まるでクリュニー中世美術館で見ているかのような素晴らしい体験ができます。

このタピスリーは、単純に色や装飾の美しさだけでなく、秘められた謎がたくさんあるというのがとても惹かれました。今回は謎解きの探偵になった気分で鑑賞しに行ってきました!

タピスリーの6面のうち、5面については人間の五感を表現しているという説が有力です。この五感というテーマはブリューゲルやルーベンスを始め、様々な画家によって描かれてきました。絵画においては、5人の女性の姿で表すのが基本となっています。通常女性は五感を体現しているか、それに関係のある持物とともに描かれます。

中世においては五感には序列が存在し、より物質的な感覚を低度とし、より精神的な感覚が高度であると考えました。序列の昇順に並べると、触覚、味覚、嗅覚、聴覚、視覚となります。

今回はこの順で作品を見ていくことにしましょう。

 

触覚 (Le toucher), vers 1500, Musée de Cluny

触覚 (Le toucher), vers 1500, Musée de Cluny

1. 触覚

 

初めて見たとき、赤の千花文様(ミル・フルール)がとにかく綺麗でした。散りばめられた動植物も多彩で、一つ一つ何が描かれているのか調べてみたくなります。最初に作品の解説板を見て「触覚」であると分かってしまったのですが、最初は解説板を見ずに、これが何を表しているのか自分で考えてみるのをオススメします。

とはいえ、これが「触覚」の寓意であるというのは、貴婦人が一角獣の角に触れているからだというのは私には難しすぎました。伝統的には「触覚」を表す際には針鼠や白貂、鳥を持っていることが多いらしいです。また、ブリューゲルとルーベンスによる「触覚」では、キスであったり、痛みであったりを触覚に結びつけました。

貴婦人と一角獣、獅子がいる中央の島は周囲と区画されており、まるで閉ざされた庭であるかのようです。閉ざされた庭は中世文学において、恋愛を成就させる場所としてよく描かれてきました。また、閉ざされた庭というのは聖母マリアの処女性を象徴しており、このタピスリーもキリスト教に何らかの関係があるのだろうと思いました。

あと、こちらを向いている獅子の顔が気が抜けているようでどこか愛らしいです。

 

味覚 (Le goût), vers 1500, Musée de Cluny

味覚 (Le goût), vers 1500, Musée de Cluny

2. 味覚

 

このタピスリーは、貴婦人が左手に止まる鷹に餌を与えている場面を表しています。カタログでは砂糖菓子となっていますが、私には謎の白いブロックにしか見えなかったです。貴婦人が何かを食べているわけではなく、中央下部に座っている猿が赤い実を食べているのが分かるので恐らく「味覚」でしょう。猿といえば、キリスト教美術において悪意や怠惰、狡猾さの寓意として登場したりして、良いイメージが無いのですが、このタピスリーではそんなイメージが無いように思えます。というか、描かれている動植物が多すぎて、その一つ一つに意味を探し求めてしまう。。。実際どこまで意味を持たせて作ったのかは知る由もないですが、まぁ面白いのでいいとしましょう。

口を開けて舌を出している獅子は、俺にも砂糖菓子をくれと言っているのでしょうか。

 

 

嗅覚 (L'odorat), vers 1500, Musée de Cluny

嗅覚 (L’odorat), vers 1500, Musée de Cluny

3. 嗅覚

 

「嗅覚」は貴婦人がナデシコで花冠を作っている場面を表したものです。「嗅覚」の寓意は「味覚」同様猿がバラの香りを嗅ぐという人間の真似によって表されています。「嗅覚」は花の香りを嗅ぐ他にも、香水瓶を持っていたり、嗅覚に優れる犬を配したりします。実は貴婦人の右上に犬が登場していて、「嗅覚」の寓意だ!と思ったのですが、犬は「触覚」以外のすべてに登場するため、寓意として配されたのではないのでしょう。

あとこのタピスリーの貴婦人が纏っている金襴の輝きがとても綺麗でした。

 

聴覚 (L'ouïe), vers 1500, Musée de Cluny

聴覚 (L’ouïe), vers 1500, Musée de Cluny

4. 聴覚

 

「聴覚」は貴婦人が台の上に置かれた携帯オルガンを演奏している場面です。「味覚」と「嗅覚」では人間の真似をしていた猿が消えています。より高次の感覚に上るに従って、猿が音楽を奏でることなど不可能であると言っているかのようです。であれば、隅の方で落胆する猿を入れてほしかったのですが、まぁそれはどうでもいいでしょう。「聴覚」を表現するには、楽器や楽譜など音楽を連想させる物が配置されますが、聴覚に優れた牡鹿が登場する場合もあります。

 

 

視覚 (La vue), vers 1500, Musée de Cluny

視覚 (La vue), vers 1500, Musée de Cluny

5. 視覚

 

五感の中で最も高次で、精神世界と最も近いとされる「視覚」は貴婦人が右手に持つ鏡で一角獣を写している場面として表されています。貴婦人の左手は一角獣の背に回り、完全に手なずけているようです。そういえば一角獣がさっきまで持っていた旗はどこへ行ったのでしょうか。「視覚」を表す定番は鏡であり、このタピスリーは典型的な「視覚」の寓意画であるといえます。ちなみに「視覚」を表す動物としては太陽を直接見ることができる強い目を持つ「鷲」が使われますが、残念ながらこのタピスリーに鷲は存在しません。

貴婦人に手なずけられているように見える一角獣ですが、動物の性質や寓意が記述された動物寓意譚(ベスティアリ)によれば、気性の荒い性格で、手なずけることは不可能とされている動物です。しかし、処女だけがこの一角獣を手なずけることができ、捕獲することができるとされています。この伝説により、一角獣は処女性や女性の純血、高貴さの象徴とされました。このことから、貴婦人は結婚前の処女であるとも考えることができます。

 

 

我が唯一つの望み (mon seul désir), vers 1500, Musée de Cluny

我が唯一つの望み (À mon seul désir), vers 1500, Musée de Cluny

6. 我が唯一の望み

 

6面のタピスリーの最後の1面、「我が唯一の望み」は、他の5面と様々な点で異なります。作品の大きさは最も大きく、画面の中心に幕屋(まくや)が登場します。貴婦人は侍女の持つ箱に装飾具をしまおうと(取り出そうと?)しています。

幕屋の上部の銘文には「mon seul désir」と書かれており、「我が唯一の望み」と訳されます。「我が唯一の望み」は五感ではなく、「愛」や「結婚」を表しているとの説がありますが、その真相は未だ謎に包まれたままです。私が鑑賞したところ、貴婦人の足下にいる猿(再び登場)が何かを食べているようなので、実は「味覚」なのではないかと思ってしまいました。意味があったり無かったりで解釈するのは非常に難しいと感じました。

カタログの解説によれば、一人の男性が自身の愛の証として、女性に贈ったものであるとの記述があります。それはこの6面のタピスリーが「一角獣狩り」という宮廷的恋愛を表すテーマでとらえることができるからです。男性が自分自身を一角獣に重ねて作らせたものというわけですね。

ふむふむ、このタピスリーを読み解くには、「一角獣狩り」についてもう少し勉強してみる必要がありそうですね。作品に隠された謎を解き明かすというのは本当に楽しいです。もっと気づけるように知識をつけようと思いました。

そうそう、ずっと気になっていたのですが、幕屋にたくさん描かれている謎の柄は「金色の炎」だそうです。

 

 

国立新美術館
会期:2013年4月24日(水)~7月15日(月・祝)
開館時間:午前10時~午後6時
金曜日は午後8時まで。入館は閉館の30分前まで。
休館日:毎週火曜日 ※ただし4月30日(火)は開館
お問い合わせ :03-5777-8600(ハローダイヤル)

 

 

 

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